LINE公式アカウントがどのように運用されているのか、あるいは運用されなくなったのか、を詳しく調べるために独自で100アカウントの抜き打ち調査を行いました。その結果と筆者が感じた傾向や所感をまとめて行こうと思います。
本記事は注意点にも記載の通り、LINE公式アカウント全体の傾向を表したものではないことを予めご了承下さい。
どうして調べようと思ったの?
LINE公式アカウントって、Twitterほどオープンに公開されているものではないため、他の法人(又は個人)アカウントがどのように運用されているのか、については意外と把握されている人って少ないのではないかな?と感じたのがきっかけです。例えば、リッチメニューはどれくらいのアカウント運営者が利用しているのだろう?とか、プロフィールが充実しているアカウントの割合って、正直なところどれくらいなのだろう?とかとか。
私自身、実際にアカウントを運用している立場として、とても気になりました。そこで自身のLINE公式アカウントへの知見を広げる目的も含めて、今回の調査を行うことを決めました。また今回は100アカウントの調査となっていますが、300アカウントを調査する中間報告的なものになるため、今後また300アカウント調査版の記事も書いていこうと思っています。お役に立てれば光栄です!
はじめに:調査方法と注意事項
対象となるアカウントの見つけ方:
1、LINEアプリのホーム画面上の検索窓にランダムに文字列(2-4文字)を入力
2、表示された公式アカウントの結果のうち〇〇番目のアカウントを調査(〇〇には1-10のランダムな数値を適用しました)
【参考】利用したランダム出力が出来るサイト
・ランダム文字列ジェネレーター
・乱数メーカー
・認証済アカウントとプレミアムアカウントのみが対象(未認証アカウントは検索対象外のため)
・1-10番目に表示されるアカウントは友だちが多いあるいはプレミアムアカウントのような信頼性の高いアカウントである傾向が強い可能性あり(上位表示のため)
・100アカウント調査のため全体の傾向を表したものではないことに留意(サンプル数が少ない可能性あり)※今後300アカウントまで拡充していく予定
業種ごとの割合
『個人』については、1人活動かグループ活動か、個人事業主か法人化しているかという基準を排して、属人的な傾向のあるビジネス(人々)という括りでまとめています。そのため個人インフルエンサーや法人化している又は事務所所属のアーティスト、スポーツ選手、バンドグループも全て含みます。検索上位のアカウント調査の傾向が強かったためか、プレミアムアカウントである割合が高く(というかほぼ全て)、後述する友だち人数も多い傾向にありました(友だち数:1万人~数十万人といった具合)
『メディア』も同じくプレミアムアカウント割合が高く、友だち数は数十万~数百万の大きめアカウントが多くなっています。そのため、プレミアムアカウントは除外した方が、比較的小規模なアカウント運営者(中小企業や小規模事業者)にとって意味のある結果がでるのではないかと感じました。
そのような理由で、プレミアムアカウントを除外した結果がこちらになります。すっきりした印象です。
『小売』が一番高くなりました。小売の範囲は、物を売っていれば全て小売に入れているため、リサイクルショップや薬局なども小売に含みます。サンプル数は小売16となるため、やはり全体的な傾向は300アカウントを調査した上で見るのが良さそうです。その他、『飲食店』は多くなっています。こちらはイメージ通りといった感想です。
友だち数の割合
友だち5,000人以下の割合がちょうど50%となっています。前述したプレミアムアカウント(個人やメディア)が人数を押し上げている傾向にあるため、中小企業や小規模事業者が運営しているアカウント(多くは認証済みアカウント)のみだと、この50%はもっと多くなります。また10,001~50,000人の割合が18.0%と高いのは『個人(プレミアムアカウント)』がこの辺りに集まっているためです。
プレミアムアカウントを除外してみました。やはりすっきりします。こちらの方が、中小企業や小規模事業者から見れば、しっくりくる割合な印象があります。
まず、500人以下のアカウントがちょうど50%となっています。一方で1,000-5,000人におさまるアカウントも30%程度あります。この緑色の層には法人企業がしっかりとアカウント運営に取り組んでいるものが目立ちました。優良な事例として参考にしたいと思えるようなアカウントはこの緑色の層に集まっています。今回の調査を通して、事例として紹介したいアカウントもいくらか発見したので、今後そちらも記事にして紹介して行けたらと考えています。
そのようなわけで、以後のグラフ結果は認証済みアカウントのみを掲載します。サンプル数は56となります。プレミアムアカウント数は44です。
リッチメニュー利用率
リッチメニューは画面下部に表示されるメニューのことです。詳しくは公式サイトをご覧ください。LINE画面内をちょっとしたホームページぽくすることが出来ます。また、自動応答メッセージと組み合わせることによって、ユーザーからのアクションを引き出したり、クーポン配布を常に案内し続けることが出来たりと、アイディア次第で様々な用途に活用できるとても良い機能なのですが、活用しているアカウントの割合は過半数に届いていません。
筆者の意見として、バナーやアイコンの準備が面倒だから、という理由があるかも知れませんね。またメッセージ配信のみに意識が向きがちなアカウント運営者が多いのかも知れません。このリッチメニューはメッセージ配信をする前に設定することで特に効果を発揮するのですが、侮られているように感じます。リッチメニュー未活用の方は、ぜひ活用をご検討ください。
クーポン・サンプルの配布率
クーポンやサンプルの配布、お得なキャンペーンを活用しているアカウントの割合です。こちらもリッチメニューと同程度の4割強となっています。
ここからクーポン・サンプル配布を活用しているアカウント(上記グラフの「配布あり」)のみを抜き出して、さらに業種別割合を見てみると以下のような形となります。
飲食店や小売はもともとの全体に対するアカウント数の割合が高いため当然、こちらのグラフも比率が高く出ます。各業種の中でクーポン配布をしている割合が高めなのは『飲食店』と『美容院・サロン』といった印象を受けました。『小売』は全体の業種別割合の28.6%から少し下がっているため、相対的には『飲食店』『美容院・サロン』ほどはクーポン配布割合は高くない状態となっています。ただ、今回サンプル数が少ないので、300アカウント集計した際に変わってくる可能性があります。『小売』の中にはリサイクルショップや薬局などクーポン配布といった施策が必ずしもマッチしていない業態が含まれているため、若干下がった形かと思います。
クーポンについては、まったく利用しない業種なども存在しており、企業戦略にも関わってくるため、一概におススメとは言えませんが、想定していた割合より少ないといった印象を持ちました。既に別のSNSアカウントや実店舗でクーポン配布やお得なキャンペーンを行っているのであれば、LINE公式アカウント上でも同様にクーポン機能を活用してみるのは良いかと思います。友だち追加のフックとして、あるいは初回のお店訪問を促す施策として活用されているアカウントが多かった印象です。
LINE VOOM(タイムライン)投稿数の規模別の割合
未投稿または10投稿以下の割合が約過半数となっています。LINE公式アカウントを運用しているアカウントの約2つに1つはLINE VOOM投稿にはあまり積極的ではない印象です。LINE VOOMは、LINE公式アカウントとはまた少し違うサービスとして考えている方が多いのかも知れません。
一方で投稿を頑張っているアカウントもあります。このLINE VOOM投稿を頑張れば、LINE公式アカウントの友だち数増加に貢献するのか? というのは少し気になりました。そこで相関係数を調べてみたところ0.29(認証アカウントのみ、サンプル数47)となりました。プレミアムアカウントを含めると0.11(サンプル数100)となります。この数値を見る限り、VOOM投稿数と友だち数の間にはあまり相関性はないように思います。こちらについては、次回300アカウント調査をした際も、同様に調べてみたいと思います。
API利用率
APIを活用した拡張的な運用をしているアカウントは5%程度と低くなりました。APIってなに?という方はこちらの公式スライドをご覧ください。
LINE公式アカウントは基本機能だけでなく、APIを活用して拡張的な機能を導入することが可能です(+で料金がかかります)。例えば、友だち一人ひとりに対しての会員証の発行やLINEログイン機能を活用して、外部で運用しているECサイトの顧客情報とLINE公式アカウント上の友だち情報を紐づけて管理したり、飲食店の店内でテーブルオーダーを受けたりと様々なことが実現可能です。
このAPI利用率が低くなった理由としては、以下のようなものが考えられると思います。
- 追加料金がかかることから、小規模なアカウントではコストパフォーマンスの面で導入が見送られている
- LINE公式アカウントの基本機能自体が近年、拡張されてきていることから、基本機能だけで足りていると考えているユーザーが一定数いる模様、あるいは拡張機能のメリットをあまり感じ取れていないので導入していない。
- そもそもAPIが何か良く分かっていない、APIの認知が広がっていない。
APIを活用した拡張機能についてですが、ゼロから高いコストをかけて開発する必要はありません。公式のマーケットプレイスにあるものを月額数千円程度で導入することで簡単に機能拡張を行うことが可能です。
また、基本機能を最大限活用することで、APIを利用しないと実現できないような機能を疑似的に実現しているアカウントもちらほら見かけました。アイディア次第でこういった使い道があるのか、と感心したものもあります。
一例として、例えば『予約機能』は、API利用の代表格の一つですが、外部リンクを貼って予約ページ(ブラウザ上)に飛ばすやり方や、自動応答メッセージを活用して、直接予約日や時間帯をチャットで送付してもらうように促す手法等など、工夫次第で基本機能で代替することも可能です。ただ、対応する量が多くなってきた場合は、工数の削減という観点からも、APIでの機能拡張を検討してみるのが良いと感じました。
運用停止率
最後に運用を辞めてしまったであろうと思われるアカウントの割合です。長期間のLINE VOOM投稿がなかったり、公式ページが消失していたり、過去の情報を掲載していたままのアカウントを「長期更新なし」としました。割合としては3割弱となっています。
停止しているアカウントの特徴として、友だち数が100人以下だったり、プロフィール欄があまり充実していなかったりと、そういった印象を受けました。反対にプロフィール欄が充実していたり、リッチメニューがしっかりしているアカウントは現役で続いている傾向が強いです。
目的意識を持たず導入してみたものの、友だちが思うように増やせずに辞めてしまった、といったパターンが多いのではないでしょうか。LINE公式アカウントは他のSNSと同じ、日々の運用が大切です。また、始める前に中長期的な目標を設定しないと、友だちが少ないうちは特に、コストパフォーマンスが合わないと感じて辞めてしまいがちになります。LINE公式アカウントを新たに始めようと考えている方は、そういった心持ちで臨むのが良いでしょう。
初期費用と運用コストを安く済ませたいなら、一定の労力は必要となります。一方で労力を少なく済ませたいなら、コストをかけて広告を打つなどの施策が必要となってきます。ふんわりとアカウントだけ開設して、すぐに辞めてしまうことのないようにお気を付けください。
最後に
さて、ここまでお読みいただきありがとうございます。今回の100アカウント調査のご報告は以上となります。
先述した通り、今回のアカウント調査は中間報告的なものとなるため、サンプル数が少なかったと筆者は感じています。そのため300アカウントまで引き続き調査を重ねていき、改めてそちらを記事として公開する予定です。ご興味のある方は、ぜひそちらも併せてお読みください。
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今回のグラフは筆者が簡易に出力したものになるため、さらに詳細な情報を見たい方や、ご自身で別のソートをかけて集計結果を表示したい方など、理由は特に問いません(悪用の危険があると判断した場合はお断りさせて頂く場合がございます)